Asia-Pacific Week 2006
Japanese Studies Graduate Summer School


ABSTRACT

日本
研究
 

開化期の日本語学習書に関する考察
‐「会話」を中心に‐

金 義 泳 (KIM, Eui Young)

早稲田大学大学院日本語教育研究科
cara@hotmail.com

1. はじめに
韓国の「開化期」の日本語学習書の中の「会話」がどのような場面や話題によって構成されているか調査分析を行うことによって「開化期」の会話教材の特徴を明らかにしようとする。具体的には、会話教材の各課の題目や会話内容を通して、「開化期」で重視されていた会話の話題や場面などはどんなものであったのか現代のものと比較する。

2.開化期の日本語学習書
2‐1.対象学習書
1)鄭雲復(1907.9)『独習日語正則』皇城広学書舗
2)林 圭(1909.7.1)『日本語学音・語篇』京城新文館
3)朴重華(1909.2.15)『精選日語大海』京城 光東書局
4)南宮濬(1910.8)『日語正編』京城唯一書館
「会話書」の会話、「一般学習書」の中の会話を、「会話」と表示することにする。 

2‐2.開化期の「会話」:
「会話」の構成は、まず一つの場面や話題が提示され、それに関連した語彙が羅列されている。その後、会話文が提示され、それに対する韓国語対訳が書かれている。「会話」のシラバスは易から難へという「文法・文型積み上げ方式」ではない。場面・話題シラバスで、「会話」の提示形式は@場面や話題が提示され、それに使えそうな会話例が羅列されているものA場面や話題から考えられる会話文を実際の対話で提示しているものがある。

3.「会話」の内容分析:
上記の4冊の中の「会話」の各課の題目や会話内容を調査分析してみると、場面(場所、状況)、話題、表現意図というように三つに分けられる。また、それぞれの下位分類として第一分類を、更にその下位分類を第二分類として、4冊の教材の「会話」の話題や会話内容を分析する。

4.場面、話題、表現意図などからみた特徴
よく使われている「場面」「話題」「表現意図」には次のようなものがある。

場所   郵便局、病院、学校、店など
状況   挨拶、見舞、お祝いなど
話 題   挨拶、年月日、時間、天候、四季、実業(農業・商業・工業)、食物、
  乗物、服、旅行、教育、地理、家屋、身体など
表現意図  謝罪、付託など

開化期の「会話」は以上のように場面や話題の項目を立てて会話を示すという編纂意図はあったと思われるが、会話文を羅列しただけのものが多いし、対話形式をとっているものでも不自然なところが多く、選ばれた文もかなり恣意的であるなどのことから、開化期の「会話」は場面や話題ごとの会話文の用例集と見るべきものが多いと言うことができるのである。しかし、開化期の編纂者が現代のように表現意図に対する認識があったかどうかは確認できないが、『日本語学音語篇』のように場面や話題のほかに「付託」という項目を立てて「寄付金を請する話」「職業を付託する話」などを、ほかに「友達を告戒する話」「謝罪」などの項目を立てていることに注目すべきである。未整理ではあるが、会話のための教材に場面や話題だけではなく、こうした表現も必要であると当時の編纂者が考えていたことは評価すべきであると思われる。これから場面や話題による語彙の特徴についても考察したい。
 

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